第4回日本中東学会奨励賞の選考結果について

日本中東学会会長 栗田禎子

第4回日本中東学会奨励賞に関して、受賞論文、選考過程、受賞理由を報告いたします。
日本中東学会奨励賞選考委員会(私市正年第12期会長、長沢栄治第13期会長、林佳世子『日本中東学会年報』編集長)は、2013年3月4日、以下の論文を第4回日本中東学会奨励賞の受賞作とすることを決定いたしました。

貫井万里 NUKII Mari, “Protest Events in the Tehran Bazaar during the Oil Nationalization Movement of Iran,” AJAMES, 28-1

[理由]
本論文は、イランの石油国有化運動に参加したバーザール商人の実態を、ペルシア語新聞に報道された抗議運動の事例分析から明らかにしたもので、バーザール商人の多数派を占めるアスナーフ連盟(中小商人・職人)の政治参加志向が運動参加の大きな動機であったこと、しかしアスナーフ連盟(中小商人・職人)と、貿易自由化によって富裕化したアスナーフ連合(貿易商や企業家)との潜在的政治対立が、後者をモサッデク政権打倒工作へと動かせた、という後の政治動向をも明らかにした。本論文の問題設定、分析視点および実証方法は国際的にも十分な価値のある論文である。また、昨今の中東アラブ諸国での民主化動向のなかでの抵抗運動の考察にも示唆を与えるものである。よって本論文を第4回日本中東学会奨励賞として推薦をいたします。